京つう

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2009年06月10日

『廃墟建築士』

小説はあまり買わない。
けれど先日なんとなく買ってしまった(笑)。

『廃墟建築士』(三崎亜記 集英社)。

建物をめぐる奇妙な物語が4つ納められた短編集です。
作者は建築関係の方でもなんでもなく、文学部出身の作家さんです。
(って、なんだか著名な方みたいですね、知らなかったのは私だけ(笑)?)

4つの物語の内の1つが「廃墟建築士」という物語です。
あまり内容を書くとネタバレになるので控えめにしますが、
廃墟を設計、建築するという廃墟建築士というのはもちろん架空の職業です。

ですが、私にはそれがどうしても架空の仕事には思えない(笑)。

なぜか?

ごくごく大雑把な説明をしますと、「建築」をめぐる言説の中にはこんなものがあります。

「建築はさまざまな条件、予測、提案等プロセスを経るけれど、いつまでも
 プロセスに浸っていることは出来ない。いつかは「切断」して「形」に
 とどめなければならない瞬間がある(作家主義的切断)。
 つまり完成はある意味で仮であり、と同時に「死」でもある」

ここで「死」とは建築的には何か?
そうです、「廃墟」に他なりません(笑)。

そこで『廃墟建築士』です(笑)。
もちろん作者はそんなふうなことはまったく意識していないでしょうし、
物語が伝えんとするところもまったくちがうところにあります。

けれどワタクシとしては、主人公が延々と廃墟を作るというその設定が
なにか象徴的なできごとのように思えて久しぶりに楽しく(?!)読めたのでした(笑)。

もちろんそんなの抜きにしても、非現実をエッセンスにしたやさしくて
おもしろい物語ですので興味のある方はどうぞ。

あ、でもこんなことを書いてると建築家はみんな「廃墟」を作っているのか
なんて思われそうですけど、もちろんそんなことはありません(笑)。

(でもね、建築的には本当は難しくて本質的なテーマなんですよ、「切断」って。)



Posted by +0 atelier at 22:10│Comments(2)
この記事へのコメント
理想を追い求めたらキリがないですもんね。ゼロから空間を作り上げていくのに、正解は一つではないし、間違いも間違いとは判断しにくいし。

妥協点というように意識せざるを得ないのかも知れませんね。
自分の信念的なもので突き進まないと、工事着工時から既に50点減の気分かも知れませんね。

建築家は大変ですね。
Posted by のり at 2009年06月11日 07:14
のりさん!ごぶさたしております。
コメントありがとうございます。
あ、大変なのかもしれないですけどたのしいんですよ(笑)。

ちなみに、私の場合その理想を社会や人といった思想や哲学に置けばおくほど「妥協点」的感覚は大きくなりますね(笑)。
逆に機能的なことや動線、エリア分けやコストなんかのいわば工学的なことについてはそういった感覚は少なくなります。
でも技術的なことについてはまた別です(笑)。

設計についてはそのうちデータベース化が極められてどんなものでも組み合わせにすぎなくなるなんて言説があるくらいですけど、でもそれで満足してたら「建築」にならないし。
おっと、なんだか愚痴ですね、これ(笑)。

技術サイドでも同様の感覚がつきまとうんでしょうね。
「今」できる最善の方法はこれしかない的判断は、きっと信念的突進でしか進めない。ほんと、理想にはキリがないですね。
のりさんの心中もお察しいたします。
Posted by +0 atelier at 2009年06月11日 10:32
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