枠
「少数の作品しか制作しないような“エリート主義的な”芸術は、
社会から盗みを働いているのと同じだと思います」
1999年、雑誌のインタビューにこたえたフィリップ・スタルクの言葉。
この人の作品、一度は百貨店の台所用品売り場やインテリア、雑貨の
コーナーで見たことがあるという人も多いのでは?
できるだけ多くの人に、最上のものを提供するという基本精神を
「民主的なオートクチュール」という言葉で語られていました。
「民主的なオートクチュール」。
なんとなくいい響きですね。
まぁ民主主義には一方で残酷な面も持ち合わせているなんて
意見もありますから、雰囲気であまりうかつなことは言えませんが(笑)、
「できるだけ多くの人に向かって」といった時、
すぐに「万人向け」という枠にはまってしまいがちなデザイン。
そんなところを「オートクチュール」という響きが払拭している、
そんなふうなことを感じませんか?
もちろん実際の作品もその言葉が表す通り、
「万人向け」なんて軽々と超えて、なんともいい感じ。
で、巷にあふれる過剰なデザインに向けてのことだと思いますが、
「デザインは死んだ」というスタルク。
自身のことをデザイナーとは呼んでほしくないみたいですよ。
たしかに「枠」が似合わない感じですもんね。
(これです、これ。)